2014/12/22

猛烈に発達した低気圧に「台風並み」??

猛烈に発達する低気圧
12月17日9時の地上天気図によると根室付近に948㍱の低気圧が見られる。この低気圧によって根室が観測した最低気圧は951.6㍱で、1994年 2月22日に記録した948.7㍱に次ぐ、観測史上第2位の記録であった。北日本及びその近海でこのように低気圧が猛烈に発達することは数年に1度程度あり、これは冬から春に現れるものである。このため、全国的に暴風や強風が吹き荒れ、北日本では暴風雪、大雪による被害が、東北か、西日本までの広い範囲で強風や大雪による被害が発生する。今回の低気圧でも、北海道は暴風雪、大雪、高潮、高波による被害が出たほか、日本海側の各地では大雪と強風による被害が出た。また、名古屋では、積雪23㎝に達する大雪となった。

この低気圧の接近から離れるまでの根室の観測記録の時間変化をグラフにしてみた。この低気圧は関東沖から房総半島をかすめて三陸沖を通って北海道東部の根室付近に達した。9時の天気図では時速35kmの速さで近づいたとしているが、北海道の西海上にあるもう一つの低気圧も関連して、この付近で急ブレーキがかかり、その後ゆっくりと反時計回りに円弧を描くように移動し、18日になって東に移動を始めた。気圧変化では接近までは急下降しているが、最低気圧記録後の気圧の上がり方が緩やかになっているのは低気圧のこうした動きを表しており、低気圧が長い時間居座ったことを示している。根室では猛烈に発達した低気圧のため、最大風速が26.1m/s、最大瞬間風速が39.9m/sを記録し、20m/s前後の風が1時間程度も続いた。平常より60㍱以上低い最低気圧と20m/s前後の暴風により、高潮被害が発生した。

猛烈に発達する低気圧_2


低気圧の動きが複雑だった様子を衛星画像で追って見る。
低気圧が四国沖にあったころから、急激に発達しながら北海道に接近し、その後ゆっくりと反時計回りに円弧を描くように移動した様子を見て欲しい。東海上を低気圧が北海道に向かっている頃、低気圧の北側に北に盛り上がるような形状をした白い雲域がもう少し西に及んでいれば、北海道東部では更なる大雪となったかも知れない。低気圧が根室付近を通って、知床半島の先まで進んだ頃から雲域のまとまりがなくなり発達が止まっている。しばらくして南東方向に移動している。

日本海にも目を向けて欲しい。沿海州付近から北東進して北海道西海上に進んだ頃から、東の低気圧の北側に広がっていた雲が覆って動きが見えなくなっているが、このころから東に向きを変えて北海道に接近している。低気圧が北海道に進んだ頃から日本海には寒気による筋状の雲が広がり、日本列島を超えて太平洋側でも筋状の雲がいっぱいに広がっている。非常に強い寒気が日本列島に流れ込んだためである。

20141216-18 猛烈発達低気圧 赤外動画

ところで、このように猛烈な発達をする低気圧について、「台風並み」という表現が使われることがある。しかし、この使い方は何が「台風並み」かを意識して使えばよいが、冬季の日本付近で大発達する低気圧(温帯低気圧)は、台風以上の激しさを持つことも理解してほしい。

各地気象台の最低気圧の記録を見ると北海道や東北北部では、台風ではなく冬季の低気圧によるものが一位を占めており、北日本の方々にとっては、台風以上に警戒すべき現象であることを示している。
台風の勢力を表すときには、台風の強さとして、中心付近の最大風速(近似的には中心気圧)を使って、「強い台」、「非常に強い台風」、「猛烈な台風」と表現する。もう一つ、台風の大きさとして、風速15m/s以上の強風域の大きさで、「大型台風」、「超大型台風」と表現する場合がある。下に示す左の天気図は10月5日台風18号が九州南部に接近した時で、右の天気図は、最初に示した12月17日のものである。

猛烈に発達する低気圧_3


台風18号は大型で非常に強い台風で、中心気圧は945㍱と今回の低気圧とほぼ同じである。天気図上に示した赤円が風速15m/s以上の強風域の半径で、この程度の強風域を伴う場合に大型台風と呼ぶ。一方、今回の低気圧の風速15m/s以上の範囲を青円で囲んだ。また、同じ天気図上に左の天気図時の台風18号の強風域を赤破線円で示した。さらに、これが超大型の台風であった場合の強風域を赤点線円で示した。桁違いの大きさであることがわかるであろう。

猛烈に発達する低気圧_4
17日午前中に全国各地で発表された警報の中で、暴風雪警報だけを図にしたが、低気圧が北海道東部にある状況下で、九州北部や四国西部等にも、暴風雪警報が発表されていた。なお、このパターンでは雪が降らない静岡、千葉、伊豆諸島などには暴風警報が発表されており、影響の大きさが桁違いの広がりを持つことがわかるであろう。

このような、台風と大発達する低気圧の影響範囲の違いなどにも配慮して「台風並み」の表現は、何を比較しているか意識した使い方にして欲しい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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